11月12日に国際男性デー特別イベント「HERoes - 彼らが語る、ジェンダーのこと」を開催しました。参加者約50人の中には男性も多く、いつものToget-HERのイベントとは違った会場風景が新鮮な印象でした。登壇者には素晴らしい男性リーダー達をお迎えしました。
デロイト トーマツグループからはグループCEO 木村研一が開催の挨拶、デロイト トーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社(当時)のCGO 伊東真史が閉会の挨拶を務めました。
4つの内容の濃いセッションを行いました。最初は「日本企業のDEIの現状」と題して、アクサ生命保険 代表取締役社長 兼CEO 安渕聖司氏、Toget-HER代表理事の及川美紀氏が、アクサ生命保険でのインクルージョン&ダイバーシティ経営のあり方を中心に話しました。及川氏が「インクルージョンが先に来るのですね」と尋ねると、安渕氏は「そう、多様性を活かすのはインクルージョン(包摂)なのです」と答えます。女性活躍は基本として、ジェンダーだけではなく国籍や年齢、障がいの有無等を含めて平等な組織づくりを進めており、社長に届く書類に社員の年齢も記載されないそうです。
及川氏は「メールに『安渕様』と書いて送ったら『様はやめてください』と返ってきたのです。トップが先頭に立って徹底した平等という社内文化を作っていることが分かります。多くの気づきを頂いています」とエピソードを披露し、安渕氏は「言行一致。自ら好奇心を持ってリアルな現場に行き、話を聞きたいのです。反応してボトムアップも起こってきます」と答えました。登壇者二人の信頼関係も伝わるセッションとなりました。参加者のアンケートでは「大企業のトップがここまで真剣に取り組まれている事に驚きと感動を覚えました」という記載がありました。
次いで「金融庁が考えるジェンダー平等の在り方とは?」 と題して、金融庁企画市場局審議官 新発田(しばた)龍史氏とToget-HERリードの大塚泰子が登壇しました。最初に新発田氏が女性活躍支援の活動に至った背景を紹介しました。「自分が変わることによって解決できることがあると思って取り組んでいます。原体験は、官庁訪問をした時、隣にいた女性が『どうせ大蔵省で女性は一人しか採用されない』と言うのに驚いたこと。採用責任者の立場になった時は、優秀な人材が欲しければ女性だと、本気で採りに行きました。彼女たちのためにいい職場を作る責任もあります。自分の職場だけでなく業界全体を変えたい。英国では金融界のトップに普通に女性がいるのも見てきました」と経験を語りました。
大塚は「女性は一番じゃないと選ばれないというのは、今でも意外と変わっていないのでは。役員になる女性はトップ中のトップです。採用時の女性比率が5割でも、意思決定層の女性比率は5割になりません」と指摘します。会話は2026年3月期から有価証券報告書の人的資本に関する開示が拡充された話に及びました。新発田氏は「人材の多様性や女性活躍は、モラルやコンプライアンスではなく当たり前に経営戦略に結び付いたビジネスの話です」とコメントしました。
3つ目は「スタートアップ界隈のBro Cultureは変えられるのか」と題して、XLOCAL代表取締役(元NewsPicks代表取締役社長)坂本大典氏と株式会社ikura代表取締役中澤英子氏が登壇しました。中澤氏は、「米国も10年前は投資家も起業家も白人男性ばかりでBro Culture(男性中心の排他的な文化)が強烈でした。今では米国は随分変わり、数年で、起業家の女性比率も資金調達額も大きく拡大しました。日本も変えられます。特に投資家側に女性が増えて変えていくことが大事でしょう」と、米国での起業経験を持つシリアルアントレプレナーとしての経験を踏まえて語りました。
坂本氏は「私はスタートアップ経営者として合理的な判断に基づいて重要なポジションに女性を就けてきました。顧客層の拡大など明確にメリットがあるのです。とはいえ、女性役員を増やした結果、役員の数が増えて意思決定に時間が掛かるようになったという失敗もありました。追加ではなく男女構成自体を変えなくてはならなかった。皆で、成功も失敗ももっとオープンに発信していきましょう。人口が減少する日本では、女性、地方、若者など、まだ十分に活躍できていない人を、フェアに伸ばしていかなくてはならない。それが競争力になります」とメッセージを送りました。
最後のセッションでは、Cキューブ・コンサルティング 代表取締役 西原立氏とサンリオエンターテイメント代表取締役社長 小巻亜矢氏が、「地方創生と女性活躍」についてディスカッションしました。西原氏は東京から岡山にUターンした際に「岡山の経済は10年以上成長していない。地域を変える新しいエンジンが必要だ」と課題を感じました。地域の経済界は年齢層の高い男性が中心になっており「新たな変化をもたらすのは女性」と考え、企業や大学の女性リーダーのネットワークWePROを立ち上げました。人口流出という共通の課題を抱える広島県との連携など、活動は拡大しています。
小巻氏も「分かります。大分に通うようになって、男性ばかりだとアクションに繋がらりにくくても、女性がいると動くという実感を持っています」と同意しました。サンリオハーモニーランドが35周年を迎え、昨年は大分県包括連携協定を結び、地域創生に取り組んでいます。今年10月には、ヘラルボニーとホンダ太陽とも連携し、インクルーシブな世界を作るというメッセージに基づき産官民共催イベントを開催しました。
西原氏が「課題は男性の仲間を増やすこと。地方にも来てみてください」と呼びかけ、大塚は「男性のコミュニティ『HERoes(ヒーローズ) by Toget-HER』立ち上げましょう!」と応えました。
イベントアンケート回答者の95%が「DEIやジェンダー平等に対する考え方にポジティブな変化があった(新たな視点を得た、より深く考えるきっかけになった 等)」と回答しました。また、男性コミュニティHERoesについても「ジェンダー平等は女性だけでは実現できないことであり、男性の観点・意見・立場も理解しながら、共通の理想を持って進んでいく必要があると思う」「この社会課題に立ち向かうには、男性の力が不可欠」など前向きな意見を頂きました。
Toget-HERは、より平等でインクルーシブな社会を作るためには、対話を促進し社会の変革に繋げる必要があると考え、活動の幅を一層広げていきます。ご期待ください。
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